今回ご紹介するのは、ある集合住宅の屋上に無許可でプレハブ小屋が増築された違法建築のケースです。
違法建築とは建築基準法などの法律に違反して建てられた建物のことで、無許可で建築された建物や許可なく増築された建物、用途地域の制限に反した建物利用などが該当します。
事例の建物は地上3階建ての集合住宅A(都市計画区域内)で、その屋上に約20㎡(およそ4m×5m)のプレハブ製小屋が後付けで設置されていました。
小屋には窓や換気口が備え付けられ、一見して簡易な居住スペースのような外観です。実際、窓のカーテンが日常的に開閉されていたり、夜間に照明が点いて人の気配が確認できたことから、この屋上小屋が日常的に居住用途に使われている可能性が高い状況でした。
本来、都市計画区域内で建物を増築する場合には事前に建築確認申請を行い許可を得ることが建築基準法で義務付けられています。
小さな小屋でも屋上に新たに設置すれば法律上は「増築」にあたり、建物所有者は本来、建築基準法第6条に基づき自治体に建築確認の申請をして許可を得なければなりません。
しかしこの建物の所有者(または施工者)はそうした手続きを一切行わずにプレハブ小屋を設置したとみられます。つまり、この屋上小屋は無許可の違法増築であり、建築基準法違反の建築物に該当すると強く推測されました。
さらに安全性の面でも重大な懸念がありました。建築基準法第20条第1項では「建築物は荷重や風圧、地震などの震動および衝撃に対して安全な構造にしなければならない」と規定されています。
しかし問題の屋上小屋は、専門的な構造設計や耐荷重計算を経ずに設置された疑いがあり、既存建物の構造強度を超えるおそれがありました。また、防火設備や非常時の避難経路についても、小屋には火災報知器が見当たらず屋上からの避難手段も限られるなど、建築基準法の防火避難基準を満たしていない可能性が高い状況でした。
以上のように、この屋上プレハブ小屋は無許可増築かつ安全基準を満たさない違法建築である疑いが極めて濃厚だったのです。
違法建築の是正要求について-増築部分の問題点
違法に増築された屋上小屋には、近隣住民や建物利用者にとって次のような深刻な危険性・問題点が指摘されました。
地震時のリスク
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プレハブ小屋は約20㎡の広さで重量がおよそ2トン以上と推定されます。既存建物の屋上が想定している荷重の範囲を大きく超えている可能性があり、構造補強なしに載せられた場合、大地震の際に屋上小屋自体が崩壊・転倒したり、最悪の場合建物から落下する危険があります。
屋上の小屋が落下すれば下の階の居住者や周囲の通行人に重大な被害を及ぼすおそれがあり、大変危険です。
台風・強風時のリスク
小屋の固定状況が不明で十分な固定がなされていない場合、台風など強風時に屋上の小屋が倒壊したり、丸ごと吹き飛ばされる恐れがあります。
飛ばされた屋根材や壁材が周囲に落下すれば、近隣の建物や道路上の人・車に二次被害を与えかねません。実際、近年でも「台風時に店舗の看板が倒壊した」「強風で看板が落下して通行人に直撃し重体になった」といった事故報告が各地であります。無許可の屋上小屋はこうした強風被害のリスクを一層高める要因です。
火災時のリスク
屋上小屋が日常的に居住に使われている場合、火気の使用や電気配線により小屋自体が火元となるリスクがあります。
ところが違法増築部分には防火区画(耐火構造)や火災報知機・消火設備などが適切に設置されていない可能性が高く、万一小屋で火災が発生しても初期発見が遅れる懸念があります。
また屋上という場所柄、下階への避難経路が限られて逃げ場が少なく、消防隊による救助も困難です。防火避難上きわめて危険な状態と言えるでしょう。
このように違法建築は建築主自身のみならず周囲にも重大な危険を及ぼす可能性があり、決して看過できない問題です。
違法建築の是正要求について-匿名で行政に是正を求めた対応方法
通報までの経緯と方針
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近隣住民である依頼者の方は、この違法と思われる屋上増築に日々不安を感じつつも、直接持ち主に注意すると近所トラブルに発展したり逆恨みされるリスクがあるため対応に悩んでいました。
そこで当事務所(行政書士事務所)へ相談が寄せられ、「匿名で行政に是正を求めたい」というご要望を受けたのが本ケースの発端です。
まず当事務所では、依頼者から現地状況の詳細をヒアリングし違法建築の疑いについて事実関係を整理しました。その上で、自治体の担当部署に正式な書面で通知する方法を提案しました。違法建築への通報先となるのは各市区町村役所の建築指導課など建築行政を担当する部署であり、そこが違反の情報提供の窓口となります。
行政への通報は直接電話で連絡する方法もありますが、本件では証拠を残し確実に対応してもらうため、内容証明郵便による通知書送付という手段を選択しました。(事前に担当課に連絡し、要求書控えへの受付印の押印および返送が断られたので内容証明郵便による対応となりました。)
匿名通報と内容証明郵便による通知
依頼者が匿名を希望されたため、通報者個人の名前は出さずに手続きを進めました。行政機関への違法建築の通報は匿名でも受け付けてもらえます。
実際、自治体は提供された情報を通報者に不利益が及ばないよう慎重に扱い、多くのケースで匿名の通報が採用されています。
本件でも通報者個人を伏せた匿名の情報提供という形で進めることとし、当事務所が代理で通知書を作成・送付することで依頼者の身元特定リスクに備えました。
選択した内容証明郵便とは、日本郵便が「いつ・どのような内容の文書を誰から誰あてに差し出したか」という事実を公的に証明してくれる郵便サービスです。
法律上の重要な通知に用いられる手段で、後日の紛争時には送付事実の証拠となり得ます。通知書を内容証明で送ることで、「●月●日に役所宛てにこのような違反指摘文書を確かに出した」という記録が残り、行政側も対応を怠れなくなる効果があります。
当事務所が作成した通知書の内容は、違反が疑われる建物の所在地・屋上小屋の規模や構造状況、そして前述の具体的な違反の疑い箇所と危険性について詳細に記載したものです。例えば以下のようなポイントを盛り込みました。
- 屋上に無許可と推定されるプレハブ小屋が設置されていること
- 窓や換気口があり居住の形跡が見られること
- 建築確認申請を経ていない違法増築である疑いがあること
- 構造耐力上非常に危険な状態であること(耐震・耐風性の欠如)
- 防火避難上の問題が大きいこと(火災報知設備や避難経路の不備)
根拠として建築基準法の該当条文(例:第6条、第20条等)も明示し、「この違法状態を放置すれば災害時に重大被害を招く恐れがあり、行政としても看過できないはずだ」という趣旨で速やかな現地調査と是正指導を強く求めました。
また通知書には現地で撮影した屋上小屋の写真も添付し、違反の疑いが一目で分かるよう証拠を示しました。
通知書の差出人については、依頼者個人の名前や住所は記載せず、当事務所(行政書士)の名義で作成・送付しています。行政書士に依頼する大きなメリットの一つが、このように依頼者のプライバシーを守りつつ通知を出せる点です。
行政書士が作成した通知書であれば、行政書士事務所名で内容証明郵便を送付し、届いた書面上は行政書士名のみが記載されるため依頼者本人を特定されにくくできます。
本人が直接役所に手紙を出すと「誰が送ったか」が相手に明白になり報復が不安…といった問題がありますが、専門家を間に立てることでそうしたリスクを低減できるのです。
さらに、行政書士に依頼することで通知文面の信頼性・適法性が高まる効果もあります。感情に任せて違法建築を非難するような内容を書いてしまうと、相手(建物所有者等)から名誉毀損や脅迫だと受け取られるリスクも否定できません。
しかし行政書士は法律のプロとして事実関係を冷静に整理し、根拠となる法律条文を示した適切な文面を作成します。
今回の通知書も専門家のリーガルチェックのもとで作成しているため、法的に問題のない表現に留めつつ確実に違反を指摘する内容となりました。
このように法律面のリスク回避と匿名性の確保を図りながら手続きを進められる点は、行政書士に依頼する大きな利点と言えます。
【関連記事】
>違法建築を匿名で通報する方法と行政書士のサポート
違法建築の是正要求について-行政の対応と結果
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内容証明による通知書を発送して程なく、自治体の担当部署である建築指導課から当事務所へ連絡がありました。
通知内容を確認したとのことで、早急に現地調査を行う予定であるとの回答を得たのです。
違反の詳細情報や写真まで添えて正式な通知を受け取ったことで、行政も事態を重く見て迅速に動いてくれたものと考えられます。
その後、具体的な調査結果や是正措置の経過については個人情報保護等の関係で現時点では詳報されていません。(後日書面による回答があるとのことです。)
しかし、役所の動きの早さや対応状況から判断して、おそらく当該屋上小屋は建築基準法違反の「違反建築物」であると正式に認定され、建物所有者に対して速やかな是正指導(撤去勧告等)がなされた可能性が高いでしょう。
一般に違法建築が発覚した場合、行政はまず所有者に是正命令(除却命令や是正指示)を発出し、それでも従わない場合には罰則や行政代執行(自治体による強制解体)といった強制措置に踏み切ることがあります。
実際「通報された違法建築を放置していると、最悪の場合は取り壊し命令や行政代執行による強制解体を受ける恐れがある」と指摘されています。
本件でも通知書により違反が明確に把握された以上、建物所有者は放置すれば罰則や強制撤去のリスクがあるため無視はできず、行政指導に従って屋上小屋の撤去等の是正措置を講じざるを得ない状況に追い込まれたと推測されます。
今回は匿名の行政通報という形を取ったことで、依頼者の身元を明かすことなく違法増築の問題を公的に訴えることができ、その結果行政も速やかな対応に動いてくれました。
役所としても違法建築の存在を知りながら放置して万一事故が起これば責任問題になりかねないため、正式な通知を受けた以上は動かざるを得なかったのでしょう。
通知後の行政の対応は非常に迅速で、「危険な違法増築を見過ごすわけにはいかない」という強い姿勢が感じられました。依頼者の方も、自らの名前を出さずに問題の建物に対して適切な措置を取らせることができ、安心された様子でした。
違法建築にお悩みの方は早めのご相談を
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近隣にこのような違法建築の疑いがある建物があり、安全面で不安を感じている場合は、早めに適切な機関へ是正を求める行動を起こすことを強くおすすめします。行政への通報は匿名でも可能であり、事実関係を伝えさえすれば役所が現地調査・指導に動いてくれます。
特に今回のケースのように内容証明郵便で正式に通知を行えば、通知を受け取った事実が証拠として残るため行政側も違反を放置しづらくなります。違法建築は放置すれば周囲に大きなリスクを及ぼしかねません。決して泣き寝入りせず、公的機関に是正を働きかけていきましょう。
「それでも自分一人で通報・通知の手続きをするのは不安…」という方は、行政書士など専門家への相談もご検討ください。今回ご紹介した事例のように、専門家のサポートを受ければ依頼者本人が名乗り出ることなく問題の違法建築を是正に導くことも可能です。
当事務所にご依頼いただけましたら、法律の観点からリスクの少ない文書を丁寧に作成し、必要に応じて代理名義での送付もできます。通報者様の匿名性や安全性に最大限配慮しつつ、適切かつ効果的な通知書の作成・発送をサポートいたします。
違法建築の存在に悩んでいる方は一人で抱え込まず、ぜひお早めに専門家へご相談ください。私たち行政書士が力になります。地域の安全のためにも、勇気を持って第一歩を踏み出しましょう。
手続の流れ
1.電話又はお問い合わせ
まずは、電話やお問い合わせにより内容証明郵便を希望されることをお伝えください。お問い合わせフォームをご利用いただく場合には該当する相談内容をご選択いただき任意の記入欄にその旨をご記入ください。電話をご利用いただく場合は、「9時から18時」まで承ります。
| ⑴ お電話によるご相談は→0743-83-2162(平日土日祝 9:00-18:00) ⑵ お問い合わせフォーム→こちらです。 |
2.契約書面の作成と送付
原則として、電話による打ち合わせ後、当日中もしくは翌日にご提出させていただきます。お見積については電話による打ち合わせ時にお伝えさせていただくことが多いですが、見積が必要な場合には、契約書面の送付と同時にお送りいたします。
3.お支払い
お支払いは、契約後5日以内に当事務所が指定する金融機関口座にお振込みよる方法でお支払いただきます。
4.内容証明郵便の作成や変更・修正
お振込みいただいた後、約7日で内容証明案を作成しご確認いただきます。内容証明郵便の案文について変更や修正がございましたらその都度お伝えいただけますと、無料で手直しさせていただきます。(差出後の変更はお受けできませんのでご了承ください。)
5.内容証明郵便の差出
内容証明郵便の案文内容をご承諾いただけましたら、内容証明郵便を配達証明付で差出させていただきます。弊所では電子内容証明郵便により差出を行っておりますのでご確認いただいた後、即座に発送させていただいております。
6.書類の郵送
内容証明郵便が無事に相手に届くと、後日弊所に配達証明書や内容証明郵便の謄本が届きますので、それらの書類(以下、ご参照ください。)を全てご依頼者様にご返送させていただきます。
【郵送書類】
- 内容証明郵便の謄本 計1通
- 配達証明書 計1通
- 領収書 計1通
- その他書類(名刺、アンケート等)
以上が大まかな手続の流れでございます。
ご依頼いただくメリット
下記には、当事務所に内容証明郵便をご依頼いただいた場合のメリットについて記載しております。
メリット1 迅速かつ効率的な手続
行政書士に内容証明の作成から差出までを依頼することで、手間や時間を大幅に節約できる利点があります。当事務所では内容証明郵便のご依頼を専門に扱っておりますので、通知書の作成や送付を迅速に行い、手続き全体をスムーズに進めることができます。
メリット2 相手に対するプレッシャーを与えられる
当事務所が作成させていただく通知書には、行政書士法施行規則に基づく行政書士の記名を作成代理人としてさせていただきます。
行政書士の記名があることで、相手に対して第三者の関与を意識させることができ、且つこちらの本気度を示すことができます。
メリット3 土日の対応も可能
内容証明郵便を利用する多くのケースでは、郵便局の窓口から差し出すケースが多いです。この場合には、土日など郵便局が営業していない場合に対応することができません。(一部の郵便局では、土日はゆうゆう窓口で対応しているようです。)
しかし、当事務所によって作成する内容証明郵便は電子形式による発送なので、土日に関わらずいつでも差し出すことができます。
ご依頼料金
下記の料金には、当事務所の記名費用を含んでおります。 (一部のサービスでは記名できない場合がございます。) 内容証明の郵送費等は別途かかります。
| 業務内容 | 案件(受取方) | 料金(税込) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 内容証明の作成と差出 | 定型外文面(個人・法人) | 33,000円~ | 1,000文字から4,000文字(最大)程度の内容文書を作成します。 |
| 内容証明トータルサポート | サービスによってご利用いただけます。 | 44,000円~ | 〃 |
お問い合わせ
お客様の声
下記はお客様からいただいたお声の一部です。当事務所では、現在約150件の口コミをいただき、総合評価は「4.9/5」と高い評価をいただいております。
そのため、実施するサービスには自信をもっております。
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内容証明郵便のイメージ
当事務所では、内容証明郵便を電子形式(電子内容証明郵便)で発送させていただいております。電子内容証明郵便の見本は以下のとおりです。なお、金額によってページ数は異なります。
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【参考記事】
日本郵便株式会社 内容証明

