内容証明を受け取らない場合の対処は?
内容証明を送って相手が受け取らなかった場合には、内容証明はどのような取り扱いがされるのでしょうか。そのまま、郵便局に保管されるのか、あるいは差出人の住所に返送されるのか気になるところです。
この記事では、内容証明に関する前記の説明をはじめ、内容証明を受け取って無視した場合や、内容証明が返還された場合にはどのような対応をすべきかについて説明させていただきます。
内容証明を受け取らない場合-内容証明はどうなる?
相手に内容証明を送り相手が、不在の場合や故意(わざと)によって内容証明を受け取らない場合には内容証明はどのような取り扱いがなされるのでしょうか、それぞれのケース別に説明させていただきます。
受取人が留守であった場合
内容証明は書留郵便扱いですので、受取人やその家族、従業員が留守であった場合には、内容証明は郵便局に持ち帰られることになります。通常は、配達員によって何度か配達を行ってもらえますが、それでも渡せない場合には、不在通知(※1)が投函されます。不在通知が投函されてから、内容証明は郵便局で原則7日間保管されることとなり、この期間中に受取人が再配達により取得するか郵便窓口で内容証明を受け取らければ、内容証明に受取人が不在であった旨の記載がされ内容証明の原本が差出人に返還されます。
このような、相手が不在により内容証明を送ることができなかった場合には、受取人に対し、意思表示が有効になされたことにはなりませんので、改めて内容証明を送り直すなど方法を検討する必要があります。もちろんこの場合には追加で内容証明の郵送料金がかかりますので、事前に下調べするなどして、相手が返ってくる日時などを図って送ることが大切です。
※1)不在通知とは、名前のとおり荷物の配達時に受取人が不在であった場合にメールや文書により配達しに来た事実を通知するサービスです。内容証明の場合、不在通知は文書によって残されます。不在通知から再配達を依頼することができ、都合の良い日時を選択し受け取ることができます。現在ではQRコードの読み取りで時間の指定を行えますので携帯で2、3分で行うことができます。
受取人が受け取りを拒否した場合
内容証明を相手の住所や所在地に郵送したとしても、相手は内容証明の受け取りを拒否することができます。このように受け取りを拒否するケースは、自分に内容証明が送られることに身に覚えがある場合に稀になされます。内容証明の受け取り拒否は法律上で違法とされていないため、受取人の意思により自由に選択することができますが、受け取りの拒否は自己にとって裁判などで不利になる可能性が高いので、内容は必ず確認しましょう。
では、このような受取人が受け取りを拒否したケースでは内容証明はどのように取り扱われるのでしょうか。内容証明は受け取り拒否によって、そのまま差出人に返還されます。返還された内容証明には受取人が受け取りを拒否した旨(例 「配達しましたが、受取拒絶の為、差出人様へ返還致します。」)が付箋や紙に記載されます。しかし、このようなケースでは受取人が留守であった場合と異なり、差出人の意思表示は受取人に到達したものとしてみなされます。
その理由は民法97条によって下記のとおり記載があるからです。条文に当てはめると「受取人が受け取りを拒否した」という内容が同条第2項の「通知が到達することを妨げたとき」に該当します。つまり、この場合には受取人が受け取りを拒否したときに差出人の意思表示が到達されたことになります。
民法97条(意思表示の効力発生時期等) 1.意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。 2.相手方は正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。 3.意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。 |
受取人が送った場所にいない場合
内容証明を相手住所に送っても、その場所に住んでない場合があります。考えられることとして「知らない間に引っ越しをした」や「返済などお金やりくりができなくなり夜逃げした」ケース等様々な理由が考えられます。前者の場合であれば、戸籍の附票(※2)をもって相手の住所の変遷を調べて現住所を特定できる場合がありますが、後者の場合には、住所の変更の目的が債権者からの取立から逃げることですので、引越し先で住民票を移していることが考えにくく、相手の居場所を特定することは難しいでしょう。(住所変更後の住民票の届出は法律により義務付けられていますが、このようなケースでは変更していないケースがほとんどです。)ちなみに、住民票は引越し後2週間以内に住所地に所在する役場で手続を行わなくてはならず、正当な理由なくこれを行わなかった場合には5万円以下の過料が科される場合がありますので皆様も注意しましょう。
※2)戸籍の附票とは、戸籍を作成した時以降の住民票の移り変わりを記録したものです。戸籍の附票は、原則本人や本人と一緒の戸籍に入っている家族であれば取得できますが、戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある方であれば、戸籍法第10条の2第1項により本人以外の者が取得することが法律で定められています。
内容証明を受け取らない場合-対策①
内容証明を送って、上記のように受取人が留守や受け取り拒否された場合、次にどのような対策や対処が考えられるでしょうか。こちらも前記同様ケース毎に説明いたします。
受取人が留守であった場合の対策
受取人が留守等の理由により内容証明を受け取らなかった場合の対策として、3つの方法が考えられます。1つ目は、内容証明を最終通告として再度内容証明を送る方法です。相手がその場所に住んでおり内容証明の不在票が入っているにもかかわらず、意図的に内容証明を受領していない可能性があります。そのような場合には、法的手続きに移行する最終通告を内容証明で送ることで、2度目の内容証明の郵送に焦り返答がある場合があります。2つ目は、最終通告をせずに支払督促に移行する手続です。支払督促とは金銭等の請求について、債権者(主に差出人)の申立てよって相当な主張の理由がある場合に支払督促を債務者(主に受取人)に送る手続で、債務者が2週間以内に支払督促について異議の申立てをしなければ、債権者は仮執行宣言を受け、強制執行の申立てを行うことができます。強制執行がなされると債務者の財産を差し押さえて売却し、債権を回収することができます。3つ目は民事訴訟です。民事訴訟の種類は通常訴訟や少額訴訟、人事訴訟等があり、金銭関係の内容証明では主に、通常訴訟や少額訴訟によって解決が図られます。
受取人が受け取りを拒否した場合の対策
受取を拒否した場合には、内容証明によって最終通告をする必要性は低いです。恐らく2通目を送ったとしても受け取りを拒否する可能性が高いからです。そのため、このようなケースではいきなり支払督促や民事訴訟によって債権を回収することが有効でしょう。その他の方法としては、内容証明の目的の原因となる事柄が詐欺や強迫などの刑事事件に関連する場合には、犯罪場所や被害者の住所地を管轄する警察署に対し、刑事告訴を行うことも可能です。刑事告訴は告訴状を提出して行いますので、事前に警察に相談することをお勧めします。
受取人が送った場所にいない場合の対策
内容証明を送ったけれど、受取人の宛先が不明として内容証明の差戻しがあった場合にはまずは、受取人の住民票(除票)を取得します。除票を取得すると、転出先の住所地が載っていますので、そちらの住所に内容証明を再送してみても良いかもしれません。それでも内容証明が届かない場合には、除票に記載のある本籍地を管轄する役場に戸籍の附票を取得し、その後の住所地の沿革を調べるとよいでしょう。それでも、受取人の所在が調査できなかった場合には、最終的な手段として公示送達により意思表示を到達させるとよいでしょう。公示送達については以下に説明させていただきました。
内容証明を受け取らない場合-対策②
◆公示送達とは
内容証明は、書留郵便によって郵送されますので、受取人が留守であった場合には不在通知が入れられることは先述の通りです。そのため、受取人が内容証明を再配達又は窓口での受け取りをしなければ、差出人の意思表示は有効に行えません。そこで、相手の住所が留守や不明で内容証明を送っても返信が来ない場合には、公示送達という裁判所の手続を行うことができます。
公示送達とは相手に対し、意思表示を到達させたいけれど、相手の住所が分からない場合など意思表示を到達することが困難な場合に用いられます。公示送達は受取人の住所が分からなくなった直前の住所地を管轄する簡易裁判所に申立てをし、送達すべき書類について掲示を始めた日から起算して7日が経過すればその翌日に意思表示の法的な効力が発生します。
【関連記事】
>意思表示の公示送達の申立てをされる方へ
◆特定記録や普通郵便の郵送
内容証明を利用する際は、相手が内容証明を受け取らなかった場合を考慮して、別便で特定記録郵便や普通郵便に内容証明のコピーを同封して郵送する場合があります。理由は、これらの郵便は相手に直接渡されることはなく、相手住所地のポストに投函されるため、受取人がその場所に居住している事実を証明することで、意思表示が民法第97条第2項により到達したと主張することができる可能性があるからです。また、内容証明は決められた文書の郵送や証明しかできませんが、普通郵便や特定記録郵便では、根拠となる資料等の郵便物と内容証明のコピーを併せて送ることができます。
内容証明の回答があった場合
内容証明を送ることにより、相手から書面や電話等により返答があった場合には内容を必ず書面に残すようにしましょう。金銭の貸し借りで返金の旨の連絡があれば、示談書や借用書を作成し、相手に署名をしてもらうことが重要です。また、電話によりそのような報告を受けた場合には、相手の気が変わる前に書面で「金銭を支払う旨」や「支払い方法」を示した書類を内容証明等で送らせるようにしましょう。送られた内容に納得した場合には、それを基に示談書や借用書を作成します。
内容証明を受け取らない場合-再送のご相談は
内容証明を受け取らなかった場合に、どのように判断するかは難しいです。支払督促や訴訟は時間や手間がかかりそうだから、内容証明をもう一度作成しようと思ってみたものの、2回目の内容はどのように記載するべきか分からないとお悩みの方は実は多いです。また、内容証明を執拗に送ると脅迫として、逆に訴えられる場合もありますので安直に送り続けることは好ましくありません。
内容証明代行室では内容証明を専門に取り扱った行政書士が、皆様の内容証明を代理によって作成し目的の実現をサポート致します。自分で作成することもできますが、内容証明を専門に扱う行政書士の名前があるだけでも相手方へのプレッシャーはかなりかかります。
料金
◆内容証明の作成及び差出
下記の料金は定型の文面に作成料金でございます。郵送費などの実費は別途かかりますのでご了承ください。
業務内容 | 案件(受取方) | 料金 |
〃 | 定型外文面(個人、法人) | 30,000円~ |
内容証明トータルサポート | 内容はお問い合わせください。 | 40,000円~ |
手続の流れ
1.ご相談ください。
メールや電話等により事情をお伺いいたします。
2.契約の締結及びお支払い
料金を説明し、ご同意いただけましたら契約書を作成させていただきます。お支払については原則として契約後5日以内とさせていただいております。
3.内容証明の作成と確認
内容証明を作成し、ご確認いただきます。
4.内容証明の変更や修正
変更や修正があれば、基本無料で承ります。
5.内容証明の差出
最終確認をいただき問題などなければ、差出させていただきます。
お問い合わせ→こちら
内容証明を受け取らない場合-よくある質問
Q1.内容証明を送る費用はどのくらいかかりますか?
A ご自身で作成された場合には「2,000円」程度かかり、専門家に依頼する場合には「12,000円~30,000円」程度かかります。
Q2.内容証明は弁護士か行政書士どちらに頼めばよいでしょうか?
A 状況によってさまざまですが、訴訟を視野に入れている場合には弁護士、内容証明によって解決することを想定しているのであれば行政書士にご依頼されるのが良いと思います。費用については弁護士の作成費用が若干高いです。(参考:「(旧)日本弁護士連合会報酬等基準」、「行政書士会連合会報酬額統計」)
Q3.内容証明後の弁護士や司法書士を紹介いただけますか?
A はい。紹介させていただけます。
Q4.内容証明はどのようなケースで利用されますか?
A 例えば下記の様なケースで利用されます。
- 金銭の返還請求
- 協議離婚請求
- 養育費の支払請求
- 慰謝料の支払請求
- 交通事故の治療費の請求
- 契約の解除通知
- クーリングオフの通知
- 借金の援用通知