入居者の家賃滞納が発生すると、大家様は「まず何から動くべきか」「後の裁判で不利にならないか」と悩みがちです。
家賃滞納への実務対応として、内容証明郵便による督促・意思表示はとてもよく用いられます。
内容証明は「誰が誰に、どんな文書を、いつ差し出したか」を郵便局が証明できるサービスで、後日の証拠化に強みがあります。

内容証明は家賃滞納によく用いられるの?
家賃滞納への対応は最初の一手で交渉の流れも裁判になった場合の強さも大きく変わります。内容証明郵便は家賃滞納の場面で「次の段階へ進む前に整えておくべき証拠」として活用されることが多い実務的な手段です。
なぜ家賃滞納と相性が良いのか
家賃滞納のトラブルは放置すると長期化しやすく、最終的には解除の可否や明け渡しが認められるかが問題になります。その際に当事者間で争点になりやすいのが「いつ督促したのか」「どの金額が未払いなのか」「期限を示して請求したのか」といった事実関係です。
督促の時期、滞納期間、滞納額などは後から食い違いが生じやすく、証拠がなければ争いになりがちです。
口頭や電話による督促は「言った」「聞いていない」という水掛け論になりやすく、客観的資料として残りません。
通知内容と日付を文書として残せるため、裁判になった場合でも書証として扱いやすい点が大きな強みです。
内容証明で整えておくと強い基本要素
家賃滞納の内容証明は単なる請求文ではなく、後日の証拠として機能するよう情報を整理して明確に記載することが重要です。
- 滞納期間と金額の特定
「令和◯年◯月分から令和◯年◯月分まで」「合計◯か月分・◯円」といった形で第三者が見ても分かるように整理します。
- 支払期限と支払方法の明示
支払期限、振込先口座、振込手数料の負担者など、行動に直結する情報を明確に記載します。
- 未払い時の次の対応の予告
期限までに支払がない場合は契約解除や法的手続に移行する可能性があることを示すことで、相手に現実的な対応を促します。
金銭請求、時効援用、相続(遺産分割協議の申出など)といった、意思表示の内容と日付が重要になる場面で幅広く利用されています。
内容証明を家賃滞納者に対して通知するメリット3つ
家賃滞納対応で重要なのは「支払を現実的に意識させること」「後の手続で不利にならないこと」「無駄な争いを増やさないこと」です。内容証明はこの三点を一度に押さえやすく督促から次の段階へ進む前に“形を整える”ための実務的な手段としてよく使われます。
内容証明は書留で厳格に届くため日常的な電話や口頭の督促とは違う緊張感が生じやすく家賃滞納を後回しにできない問題として相手に認識させやすくなります。さらに通知書の中で滞納額と対象期間と支払期限と支払方法を整理して示すことで相手が「何をすればよいか」を迷わず理解でき支払や連絡など具体的な行動につながりやすくなります。
支払期限を明確にし期限内に支払がない場合は契約解除や法的手続に移行する可能性がある旨を端的に記載すると相手が現実味を持って対応しやすくなります。
家賃滞納は長期化すると「督促はあったのか」「いくらの請求なのか」「期限を区切ったのか」といった事実が争点になりやすく言った言わないの水掛け論になりがちです。内容証明を送っておけば督促した事実や期限を区切って請求した事実や解除を予告した事実などを日付付きで残せるため後に訴訟になっても書証として整理しやすく不必要な争いを減らしやすくなります。
内容証明は「滞納額と内訳」「対象期間」「期限」「入金先」「連絡方法」などを整理した書面になるため相手の認識違いや言い訳を事前に潰しやすくなります。結果として交渉の土台が整い保証人への連絡や契約解除や明渡請求へ進む場合も説明がぶれにくく次の手続へ移行しやすくなります。
滞納の対象期間と合計額と内訳、支払期限、振込先と名義、振込手数料の負担、未払い時の次の対応、連絡先、物件や契約の特定情報を上から順に並べると読み手の理解が速くなります。
内容証明は「文章の整理」がそのまま武器になります
強い言葉よりも事実と請求内容を分かりやすく整理することが重要です。次の章では郵便局で送る方法と注意点を具体的に解説します。
内容証明を郵便局で送る方法
内容証明は「郵便局に差し出して送る」手紙ですが、通常の郵便や速達のようにポスト投函では利用できません。取り扱いのある郵便局(集配局など)へ持ち込み、窓口で手続します。
内容証明を郵便局で送る―必要な物
- 内容証明文書:3通(差出人控え/受取人用/郵便局保管用)
- 封筒:1枚(差出人・受取人の住所氏名を記載)
- 郵便費用:目安 約2,000円前後(枚数・オプションで変動)
- 印鑑:訂正が生じた場合に使用することがあります
内容証明を利用する際の注意
内容証明に関する注意
内容証明は「いつ・誰が・誰に・どんな文書を送ったか」を証明できますが、相手に配達されたかまでは、内容証明単体では確定しません。そのため、実務上は配達証明を付けて送るのが一般的です(内容証明は通常、一般書留で差し出されます)。
家賃滞納者へ送る場合の注意
家賃滞納では、滞納者が物件に居住していない(夜逃げ等)可能性もあります。内容証明は書留で送るため、受け取られない/到達しない状況が続くと、通知の効果が出にくいことがあります。
送付前に「現在もその住所で生活実態があるか」「出入りがあるか」を可能な範囲で確認し、事件性が疑われる場合は警察へ、事件性がない場合は状況に応じて訴訟等の法的手続に進める判断が重要です。
内容証明で通知したが返答がない場合
内容証明を送付しても支払や連絡が一切ないケースは珍しくありません。この段階では感情的に動くのではなく状況を整理し次の一手を順番どおりに進めることが重要です。
内容証明を送っても支払いがない場合でも直ちに強制退去や鍵交換などの行為はできません。家賃滞納への対応は必ず法律上認められた手順で進める必要があります。保証会社がない物件や保証が機能していない場合には大家様として次の対応を検討していくことになります。
- 連帯保証人に連絡する
滞納が一定期間続いている場合は連帯保証人への連絡や請求を検討します。連帯保証人は賃借人と同一の支払義務を負うとされており滞納賃料について直接請求することが可能です。本人と連絡が取れない場合でも保証人経由で支払や連絡が進むケースがあります。
実務上のポイント保証人への連絡も口頭だけで済ませず後に証拠として残る形で行うことで対応の一貫性を保ちやすくなります。
- 賃貸借契約の解除と法的手続を検討する
滞納が重なり支払の見込みがない場合は賃貸借契約の解除を検討します。ただし解除をしたとしても大家様が自ら入居者を追い出すことはできません。建物の明渡しは裁判手続を経て行うのが原則であり自力救済は認められていません。
注意:解除が有効かどうかは滞納期間や金額や契約条項やこれまでの経緯によって判断されます。解除のタイミングを誤ると後の手続が長期化するおそれがあります。
家賃滞納者に対する内容証明のテンプレート(ひな形)
通知書
令和○年○月○日
被通知人
大阪府大阪市○○1-2-3
行政 太郎 殿
通知人
大阪府大阪市○○2-3-4
司法 洋子
冠省
私は、貴方に対し、下記のとおり建物を賃貸しました。
記
1.契約日:令和○年○月○日
2.賃貸物件:
所在 大阪府大阪市〇町○丁目○番地
家屋番号 ○番
種類 居宅
構造 木造スレート葺2階建
床面積 1階 ○○㎡/2階 ○○㎡
3.賃料:1カ月 6万円
4.契約期間:令和○年○月○日から令和○年○月○日まで
しかし、貴方は、令和○年○月分から現在に至るまで、合計5カ月分の賃料30万円の支払を行っておりません。つきましては、下記期限までに、振込手数料をご負担の上、滞納賃料30万円をお支払いください。
支払期限:令和○年○月○日 まで
なお、期限内にお支払いいただけない場合には、やむを得ず賃貸借契約の解除を含む法的手続きへ移行する可能性があることを申し添えます。
記
○○銀行 ○○支店
普通 1234567
シホウ ヨウコ
草々
※「解除通知まで同時に入れるか」「まずは督促に留めるか」「分割提案を入れるか」などは、滞納状況・交渉方針で最適解が変わります。
内容証明を家賃滞納者に対して行政書士が通知する
内容証明は、ふだん利用し慣れていない方が多く、文面の整備(滞納期間・滞納額・期限・解除の書き方等)と、郵便局での手続(形式・部数・訂正のルール等)に手間がかかりがちです。大家様は賃貸管理の業務も重なるため、通知書作成から差出までを抱えると負担が大きくなります。
そのほかの「お客様の声」はこちらからご確認いただけます。
内容証明を家賃滞納者に対して通知する―料金
弊所では、内容証明の作成・差出代理に加え、お客様が作成された文案を行政書士が確認し、必要な体裁を整えたうえで送付するサポートも行っています。料金は下記のとおりです。
| 業務内容 | 案件(受取方) | 料金 |
|---|---|---|
| 内容証明の作成と送付 | 定型外文面(個人、法人) | 33,000円〜 |
| 内容証明トータルサポート | 内容はお問い合わせください。 | 44,000円〜 |
※通知書の内容によっては対応できない場合や、難易度により料金が変動する場合があります。あらかじめご了承ください。
内容証明を家賃滞納者に対して通知する‐よくある質問
Q1. 6か月滞納の入居者へ内容証明を送り、期限前に3か月分だけ入金がありました。残額未納のまま期限到来です。解除できますか?
できます。滞納賃料が全額解消されていない以上、契約解除を前提に手続を進めることは可能です。ただし解除が有効と認められるかは滞納期間や金額やこれまでの経緯や契約条項を踏まえて判断されるため、解除通知の書き方とタイミングは慎重に決める必要があります。
Q2. 内容証明は普通の郵便局でも出せますか?
出せません。内容証明はすべての郵便局で取り扱っているわけではなく、集配郵便局など取り扱いのある郵便局の窓口で差し出す必要があります。
Q3. 内容証明だけで「配達されたこと」まで証明できますか?
できません。内容証明は文書の内容と差出日を証明する制度であり、配達の事実までは証明しません。配達された事実を残したい場合は配達証明を付けて送る必要があります。
Q4. 相手が受け取らない(不在・受取拒否)場合はどうなりますか?
不在や受取拒否の場合でも差し出した事実自体は残りますが、到達の評価が問題になることがあります。そのため送付先住所に居住実態があるかを事前に確認し、状況に応じて次の法的手続を見据えた対応を進めるべきです。
Q5. 家賃滞納は何か月から内容証明を送るべきですか?
法律上の明確な基準はありませんが、滞納が続くほど回収は困難になります。そのため滞納が発生し支払いが滞る兆候がある段階で、早めに内容証明で事実関係を整理しておくのが実務上有効です。
Q6. 内容証明を送れば必ず家賃は支払われますか?
必ず支払われるわけではありません。内容証明に強制力はありませんが、心理的効果と証拠化の効果により支払や連絡を促す実務上の効果は期待できます。支払いがない場合は次の手続へ進む前提で作成します。
Q7. 内容証明の文面に「契約解除」まで書いても問題ありませんか?
問題ありません。滞納状況によっては解除の予告まで記載することで対応を促しやすくなります。ただし解除が認められる前提がない段階で断定的に解除を宣言すると紛争の原因になるため、事案に応じた表現が必要です。
Q8. 分割払いの提案を内容証明に書いてもよいですか?
書いても問題ありません。支払意思はあるが一括が困難な相手には有効な場合があります。ただし金額、支払期限、振込日、遅延時の扱いを明確にしないと後のトラブルにつながるため条件は必ず具体的に記載します。
Q9. 滞納者がすでに退去している可能性があります。それでも内容証明を送る意味はありますか?
居住実態がない住所へ送っても実効性は低くなります。そのため送付前に可能な範囲で居住実態を確認することが重要です。夜逃げなど事件性が疑われる場合は警察への相談も検討します。
Q10. 大家が勝手に鍵を交換したり荷物を撤去したりできますか?
できません。契約を解除しても明渡しは裁判手続を経て行うのが原則であり、鍵交換や荷物の撤去といった自力救済は違法となる可能性があります。必ず法的手順に従って進める必要があります。
家賃滞納の通知文面、状況に合わせて整えます
「督促で止める」「解除も視野に入れる」「保証人・保証会社がいる」など、状況で最適な文面は変わります。まずは事案の整理からでもご相談ください。
※記事内のテンプレは一般例です。実案件では契約書・滞納経緯等を踏まえた調整が必要です。


