別居中の生活費が支払われない場合、婚姻費用を内容証明郵便で請求することで、請求した事実を証拠として残すことができます。この記事では、内容証明で婚姻費用を請求する方法、書き方、文例、注意点、行政書士へ依頼できることを分かりやすく解説します。
婚姻費用とは
婚姻費用とは、夫婦と未成年の子が通常の生活を送るために必要となる生活費のことです。具体的には、住居費、食費、医療費、教育費、光熱費、通信費などが含まれます。
夫婦には婚姻中、互いに生活を支え合う義務があります。そのため、別居していても、収入の多い配偶者は、収入の少ない配偶者や子の生活を支えるために婚姻費用を分担する必要があります。
別居中でも婚姻費用を請求できる理由
離婚が成立するまでは、夫婦関係は法律上継続しています。そのため、別居中であっても、婚姻費用を請求できる可能性があります。
特に、子どもを連れて別居している場合や、相手方が生活費を一切支払わない場合には、早めに請求の意思を明確にしておくことが重要です。
婚姻費用は、一般的に「請求した時点」以降が問題になりやすいため、口頭だけでなく、内容証明郵便などで請求の証拠を残しておくことが大切です。
婚姻費用を内容証明で請求するメリット
請求した証拠が残る
内容証明郵便を利用すると、「いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書を送ったか」を郵便局が証明してくれます。婚姻費用を請求した事実を明確に残せる点が大きなメリットです。
相手へ心理的プレッシャーを与えられる
普通郵便やLINEでの請求とは異なり、内容証明郵便は正式な通知として受け取られやすく、相手方に支払いを検討させるきっかけになります。
調停前の準備になる
相手方が支払わない場合には、家庭裁判所で婚姻費用分担請求調停を申し立てることになります。その際、事前に内容証明で請求していた事実は、経緯説明の資料として役立ちます。
婚姻費用の請求文を感情的に書いてしまう前に
内容証明は、感情をぶつける文書ではなく、請求内容を冷静に整理して相手に伝えるための文書です。文面作成や発送前チェックもご相談いただけます。
内容証明で婚姻費用を請求する流れ
- 事実関係を整理する
婚姻日、別居日、子どもの有無、生活費の支払い状況、相手の収入状況などを整理します。
- 請求内容を決める
請求金額、支払期限、振込先、今後の毎月の支払い方法を検討します。
- 内容証明の文面を作成する
感情的な表現を避け、事実と請求内容を明確に記載します。
- 内容証明郵便で送付する
配達証明を付けることで、相手に届いた日も確認できます。
- 支払いがない場合は調停を検討する
相手が応じない場合には、家庭裁判所で婚姻費用分担請求調停を検討します。
内容証明に記載すべき内容
婚姻費用請求の内容証明には、次の事項を整理して記載します。
- 通知人と受取人の住所・氏名
- 婚姻日
- 別居開始日
- 未成年の子の有無
- 生活費が支払われていない事実
- 婚姻費用を請求する意思
- 請求金額
- 支払期限
- 振込口座
- 支払いがない場合の対応
相手を過度に非難する表現、脅迫的な表現、事実確認が不十分な断定表現は避けるべきです。後の調停や協議で不利な印象を与える可能性があります。
婚姻費用請求のテンプレート・ひな形

以下は、別居中の配偶者に対して婚姻費用を請求する場合の文例です。実際に使用する場合は、事案に応じて内容を調整してください。
通知書(コピー用)
私は、貴殿に対し、下記のとおり婚姻費用の支払いを請求いたします。
私と貴殿は、令和○年○月○日に婚姻し、夫婦として生活してまいりました。しかし、令和○年○月○日頃から、夫婦関係の悪化により別居するに至りました。現在、私は未成年の子である○○を監護しながら生活しております。
別居後、私は、住居費、食費、光熱費、通信費、子の養育に必要な費用等を負担しながら生活していますが、貴殿から十分な生活費の支払いはなされておりません。
夫婦は、婚姻中、互いに生活を保持する義務を負っており、別居中であっても、離婚が成立するまでは、収入や生活状況に応じて婚姻費用を分担する必要があります。
つきましては、貴殿に対し、本書面到達後○日以内に、未払いの婚姻費用として金○万円を、下記口座へお支払いくださいますよう請求いたします。
また、今後の婚姻費用として、令和○年○月分以降、毎月末日限り、金○万円を同口座へお支払いください。
【振込先】
○○銀行 ○○支店
普通預金 口座番号○○○○○○○
口座名義 ○○○○
なお、上記期限までにお支払いがない場合、または今後の婚姻費用の支払いについて誠実な対応がなされない場合には、家庭裁判所に対する婚姻費用分担請求調停の申立てを含め、必要な手続を検討いたします。
本書面は、貴殿を一方的に非難することを目的とするものではなく、別居中の生活費について、必要な負担を求めるために送付するものです。今後の生活の安定および子の福祉のため、速やかなご対応をお願いいたします。
令和○年○月○日
通知人 住所 ○○○○
氏名 ○○○○
受取人 住所 ○○○○
氏名 ○○○○ 殿
相手が支払わない場合の対応
家庭裁判所への婚姻費用分担請求調停
内容証明を送っても相手が支払わない場合には、家庭裁判所へ婚姻費用分担請求調停を申し立てる方法があります。調停では、双方の収入資料や生活状況をもとに、婚姻費用の金額や支払方法を話し合います。
離婚調停との違い
婚姻費用分担請求調停は、離婚するかどうかではなく、婚姻中の生活費をどう分担するかを決める手続です。離婚調停とは別に申し立てることも可能です。
弁護士へ相談すべきケース
相手方との対立が激しい場合、DVがある場合、財産分与・親権・慰謝料なども含めて争いがある場合には、弁護士への相談を検討すべきです。
行政書士へ依頼できること
行政書士は、婚姻費用請求に関する内容証明郵便の文面作成、事実関係の整理、発送前チェックなどを行うことができます。
- 婚姻費用請求書の作成
- 内容証明郵便の文面整理
- 感情的な表現の修正
- 請求内容の整理
- 発送前の確認
行政書士へ依頼できないこと
行政書士は、弁護士のように相手方と代理交渉をしたり、調停や訴訟の代理人になることはできません。
- 相手方との代理交渉
- 調停代理
- 訴訟代理
- 法的紛争性が高い案件での代理対応
もっとも、内容証明の作成段階で文面を整えることは、後のトラブル予防にもつながります。
内容証明による婚姻費用請求でよくある質問
Q. 婚姻費用請求は内容証明で行うべきですか?
A. 必須ではありませんが、請求した証拠を残す意味では内容証明郵便が有効です。
Q. 内容証明を送れば必ず支払ってもらえますか?
A. 必ず支払われるわけではありません。ただし、相手に正式な請求意思を伝える効果があります。
Q. 行政書士へ依頼できますか?
A. 内容証明の文面作成や発送は行政書士へ依頼できます。ただし、代理交渉や調停代理はできません。
Q. 婚姻費用はいくら請求できますか?
A. 夫婦双方の収入、子どもの人数・年齢、生活状況などによって異なります。家庭裁判所の算定表が参考になります。
Q. 調停前に内容証明を送る意味はありますか?
A. あります。事前に請求した事実を残せるため、調停時の経緯説明にも役立ちます。
Q. LINEやメールで請求してもよいですか?
A. 可能ですが、証拠性や正式な通知としての分かりやすさを考えると、内容証明郵便の方が適している場合があります。
Q. 相手の住所が分からない場合はどうなりますか?
A. 内容証明郵便は送付先住所が必要です。住所が不明な場合は、まず送付先の確認が必要です。
Q. 婚姻費用と養育費は違いますか?
A. 違います。婚姻費用は離婚前の生活費、養育費は離婚後の子どものための費用です。
Q. 内容証明に強い言葉を書いてもよいですか?
A. 過度に強い表現や脅迫的な表現は避けるべきです。冷静で客観的な文面が望ましいです。
Q. 内容証明の作成だけ依頼できますか?
A. はい。文面作成のみ、発送前チェックのみのご相談も可能です。
まとめ
婚姻費用は、別居中であっても離婚が成立するまで請求できる可能性があります。相手方が生活費を支払わない場合には、内容証明郵便で請求の意思を明確にし、証拠を残しておくことが重要です。
ただし、内容証明は書き方を誤ると、感情的な対立を深めたり、後の手続で不利な印象を与えることもあります。婚姻費用の請求を検討している方は、文面作成の段階で専門家へ相談することをおすすめします。

