顕正会であった事件を解説

顕正会であった事件を解説 宗教団体
顕正会と勧誘トラブル

顕正会の会員による勧誘をめぐっては、過去に逮捕、家宅捜索、刑事事件、国を相手とする裁判などが報道されています。本記事では、公開されている報道や公的資料をもとに、代表的な事件の概要と、宗教勧誘が違法となる境界について解説します。

顕正会とは

顕正会は、正式名称を「冨士大石寺顕正会」とする宗教法人です。公式サイトでは、日蓮大聖人の仏法と国立戒壇の建立を掲げて活動する宗教団体であると説明されています。

宗教を信じること、宗教団体に加入すること、信仰内容を他人に伝えることは、憲法上の信教の自由によって保障されています。そのため、顕正会の会員であることや、顕正会への入会を勧めること自体が違法になるわけではありません。

一方で、信教の自由が保障されているからといって、勧誘のために相手を脅したり、帰宅を妨げたり、車に無理やり乗せたりすることまで認められるわけではありません。宗教活動であっても、刑法や民法その他の法律に反する行為があれば、刑事責任や民事責任が生じる可能性があります。

重要な点

問題となるのは宗教の教義そのものではなく、具体的な勧誘方法や、勧誘を受けた人の意思が尊重されていたかどうかです。

事件を確認する際の注意点

顕正会に関する情報は、インターネット上に多数掲載されています。しかし、その中には、対立する宗教団体の関係者が発信したもの、個人の体験談、出典が明らかでない情報も含まれています。

そのため、事件について確認するときは、警察庁などの公的資料、裁判例、報道機関の記事、研究機関が報道内容を整理した資料などを区別して確認する必要があります。

また、「逮捕された」という事実と、「裁判で有罪が確定した」という事実は同じではありません。逮捕後に不起訴となる場合や、処分保留で釈放される場合もあります。被疑者として捜査を受けた段階では、犯罪が確定したわけではない点にも注意しなければなりません。

逮捕

捜査機関が被疑者の身柄を拘束する手続です。有罪確定を意味しません。

不起訴

検察官が刑事裁判を提起しない処分です。嫌疑不十分や起訴猶予などがあります。

有罪判決

裁判所が犯罪の成立を認定した判決です。確定したかどうかも確認が必要です。

新潟県で起きた逮捕監禁事件

顕正会の勧誘をめぐる事件として、過去に新潟市内で発生した逮捕監禁事件が報道されています。

2006年11月、新潟市内で顕正会の会員2人が男性に入信を勧めたところ、男性がその場から逃げようとしたため、襟首をつかんで投げ飛ばすなどの暴行を加えたとされています。

さらに、男性を軽自動車に押し込み、危害を加える趣旨の言葉で脅しながら約2時間にわたって車内に監禁し、会館へ連れて行ったと報じられています。会館では数珠を渡し、読経をさせたとされています。

このような行為が事実であれば、単に熱心な宗教勧誘という範囲を明らかに超えています。相手の身体を押さえたり、車内から出られない状態にしたりする行為は、暴行罪、傷害罪、逮捕監禁罪などに該当する可能性があります。

信仰を勧める目的でも正当化されない

「相手のためを思って行った」「入信すれば救われると考えた」という動機があったとしても、相手の身体の自由を奪う行為が当然に許されるわけではありません。

2013年の入信強要容疑と強制捜査

2013年には、顕正会の会員による入信強要の疑いを受け、警視庁公安部が教団施設を捜索したと報道されました。

公開されている報道内容によると、男性会員2人がアルバイト先の男性に対し、入信しなければ身体に悪いことが起きるなどの趣旨の発言をし、顕正会への入信を強要した疑いが持たれました。

これを受け、同年9月11日、警視庁公安部が顕正会本部、東京会館など複数の関係先を捜索したとされています。

警察による捜索が行われたという事実は、捜査機関が犯罪の疑いに関する証拠を確認する必要があると判断したことを意味します。ただし、家宅捜索を受けたことだけで、宗教団体全体の犯罪や組織的な関与が確定したことにはなりません。

刑法上の強要罪は、生命、身体、自由、名誉または財産に害を加える旨を告知して脅迫したり、暴行を用いたりして、相手に義務のないことを行わせた場合などに成立する可能性があります。

宗教勧誘では、「入信しないと不幸になる」「信仰を断ると家族に災いが起きる」といった説明が行われることがあります。しかし、発言の内容、言い方、回数、周囲の状況、相手が感じた恐怖などによっては、単なる宗教上の説明ではなく、違法な脅迫や強要と評価される可能性があります。

未成年者誘拐容疑で会員らが逮捕された事件

2015年には、未成年の大学生を勧誘目的で連れ回したとして、顕正会の関係者らが未成年者誘拐容疑で逮捕された事件が報道されています。

顕正会の関係者らは、上野公園を訪れていた未成年の男性に声をかけ、東京見物に誘ったうえで車に乗せ、板橋区内にある教団施設付近の駐車場まで連れて行ったとされています。

当初は3人が逮捕され、その後、別の関係者2人も逮捕されたと報じられました。報道では、入信させる目的で男性を連れて行った疑いが持たれたとされています。

一方で、この事件については、逮捕された5人が処分保留で釈放され、その後、成人4人については不起訴処分となり、未成年者1人が家庭裁判所に送致されたと報告されています。また、顕正会本部は逮捕について不当であるとの見解を示したとされています。

この事件を取り上げる際は、「逮捕された」という部分だけでなく、その後に成人4人が不起訴となったことも併せて記載する必要があります。

未成年者誘拐罪は、暴力を使った場合だけに成立するものではありません。未成年者をだましたり、誘惑したりして、保護されている生活環境から自分や第三者の支配下へ移した場合にも成立する可能性があります。

誘い方も判断材料になる

最初から宗教勧誘であることを伝えず、「遊びに行こう」「相談に乗ってほしい」「食事をしよう」などと呼び出し、後から長時間の勧誘を行う方法は、重大なトラブルにつながることがあります。

警察の捜査をめぐる国家賠償請求訴訟

顕正会に関係する事件には、顕正会側が警察の捜査を違法であるとして争った裁判もあります。

顕正会の会員である原告らが、アルバイト先の同僚を強引に顕正会へ勧誘したとして、神奈川県警察が強要罪の疑いで捜査を開始し、事情聴取などを行った事案がありました。

原告らは、犯罪の疑いがないにもかかわらず捜査を開始され、違法な取調べによって精神的苦痛を受けたほか、顕正会の布教活動を妨害されたなどとして、国家賠償を求めました。

しかし、横浜地方裁判所は2016年3月25日、原告らの請求を棄却したとされています。

この裁判は、顕正会の教義が正しいかどうかを裁判所が判断したものではありません。警察が強要罪の疑いを前提として捜査を開始し、事情聴取などを行ったことに違法性があったかどうかが争われた事件です。

宗教活動についても、具体的な犯罪の疑いがある場合には警察の捜査対象となります。同時に、警察の捜査にも法律上の限界があるため、捜査を受けた側がその違法性を裁判で争うことも可能です。

公民館の利用拒否をめぐる裁判

顕正会が関係した裁判には、顕正会側の主張が一部認められたものもあります。

顕正会は、群馬県東吾妻町から公民館の使用を認められなかったことが違法であるとして、同町に対して損害賠償を求める訴訟を提起しました。

東京地方裁判所は2019年8月21日、東吾妻町に対し、顕正会へ6716円を支払うよう命じたとされています。

裁判所は、予定されていた集会が顕正会の会員だけを対象とするものであり、公民館の使用を許可しても、自治体が特定の宗教活動を支持することにはならないと判断したと報じられています。

この裁判から分かるのは、過去に会員による勧誘トラブルが報道されている宗教団体であっても、そのことだけを理由として、行政が一律に施設利用を拒否できるわけではないということです。

日本では、信教の自由、集会の自由、行政による平等な取扱いが保障されています。個別の違法行為については厳正に対処する必要がありますが、団体名だけを理由とする不利益な取扱いについても、法的な問題が生じる可能性があります。

宗教勧誘が違法となる場合

宗教勧誘は原則として自由ですが、手段や程度によっては違法となります。特に、次のような行為には注意が必要です。

  • 断っている相手を取り囲み、長時間帰宅させない
  • 車に乗せた後、降りたいと言っても降ろさない
  • 相手の腕、服、かばんなどをつかんで移動を妨げる
  • 入信しなければ危害や重大な不利益が生じると告げる
  • 複数人で威圧し、入信届を書くまで解放しない
  • 未成年者を保護者に知らせず遠方の施設へ連れて行く
  • 拒否された後も自宅や勤務先への訪問を繰り返す
  • 退会を申し出た人に対して脅迫や嫌がらせを行う

逮捕監禁罪

相手を一定の場所から移動できない状態にした場合には、逮捕監禁罪が成立する可能性があります。鍵をかけた部屋に閉じ込める場合だけでなく、複数人で囲んで退出できないようにした場合や、車から降りられないようにした場合も問題となります。

強要罪

暴行または脅迫を用いて、入信届を書かせたり、読経をさせたり、会館へ行かせたりした場合には、強要罪が成立する可能性があります。

暴行罪・傷害罪

腕をつかむ、押す、引っ張る、車に押し込むなどの行為は、けががなくても暴行罪となる可能性があります。けがを負わせた場合には傷害罪が問題となります。

不退去罪

自宅の敷地や室内から退去するよう求められたにもかかわらず、正当な理由なく居座った場合には、不退去罪が成立する可能性があります。

民事上の不法行為

刑事事件として立件されない場合でも、平穏な生活、身体の自由、プライバシーなどを侵害したとして、民法上の損害賠償責任が生じることがあります。

強引な勧誘を受けた場合の対処法

顕正会に限らず、断っても宗教勧誘が続く場合には、曖昧な返答を繰り返すのではなく、入会する意思がないことと、今後の連絡や訪問を拒否することを明確に伝えることが重要です。

  1. 入会する意思がないと明確に伝える

    「興味がありません」だけでなく、「入会しません。今後の勧誘もお断りします」と伝えます。

  2. その場から離れる

    長時間の説明に付き合わず、店舗や駅など、人目のある場所へ移動します。

  3. 記録を残す

    勧誘を受けた日時、場所、相手の氏名、発言内容、電話番号、車両番号などを記録します。

  4. 危険を感じたら警察へ連絡する

    帰宅を妨げられた、囲まれた、車から降ろしてもらえないなどの場合は、ためらわず110番通報を検討します。

  5. 書面で勧誘拒否を通知する

    訪問や連絡が続く場合は、内容証明郵便などにより、勧誘、訪問、電話、郵便物の送付を拒否する旨を通知します。

その場で入信届を書かない

「形式だけ」「名前を書くだけ」「入会にはならない」と説明されても、内容を理解できない書類には署名しないことが大切です。一度その場を離れ、家族や専門家に相談してください。

顕正会を退会したい場合

宗教団体への加入と退会は、原則として本人の意思に基づくものです。退会について相手方の許可を得なければならないものではありません。

口頭で退会を伝える方法もありますが、後日「退会の申出を受けていない」「本人の意思か確認できない」などと言われる可能性があります。そのため、退会の意思を明確にした書面を作成し、配達状況や文書内容を証明できる方法で送付することが有効です。

退会通知には、少なくとも次の事項を記載します。

  • 顕正会を退会する意思
  • 退会の効力を直ちに発生させること
  • 今後の訪問、電話、郵便、SNSによる連絡を拒否すること
  • 家族、勤務先、知人への連絡を拒否すること
  • 保有する個人情報の削除または利用停止を求めること
  • 書籍、数珠、新聞などの返還方法

退会の意思表示をした後も、会員から勧誘や面談の要求が続く場合には、「話し合いには応じない」「第三者を通じてのみ連絡する」と通知する方法があります。

直接会館へ行くことに不安がある場合や、紹介者との関係を断ちたい場合は、無理に対面で手続を行う必要はありません。郵送による退会通知を利用し、必要に応じて行政書士や弁護士などの専門家へ相談することも考えられます。

事件が報道されていても冷静な区別が必要

顕正会の会員が関係した逮捕監禁事件、入信強要容疑による捜索、未成年者誘拐容疑による逮捕などが報道されてきたことは事実です。

しかし、個々の会員が起こした事件と、顕正会に所属するすべての会員の行動を同一視することはできません。また、逮捕された事件については、その後の不起訴処分や裁判結果まで確認する必要があります。

大切なのは、団体名だけを見て判断するのではなく、実際にどのような勧誘が行われたのか、相手の意思が尊重されたか、暴行や脅迫がなかったか、退会の意思が妨げられていないかを具体的に確認することです。

宗教を信じる自由があるのと同じように、宗教を信じない自由、入会を断る自由、加入した宗教団体を退会する自由も保障されています。

よくある質問

顕正会の勧誘を受けること自体は違法ですか。

勧誘を行うこと自体は、原則として違法ではありません。ただし、断った後も長時間帰さない、脅す、身体をつかむ、車から降ろさないなどの行為があれば、刑事上または民事上の問題になる可能性があります。

入信届を書いたら必ず会員になりますか。

宗教団体への加入は、本人の意思表示に基づいて判断されます。書面の名称だけでなく、署名した際の説明、本人の認識、自由な意思に基づく署名だったかなども問題となります。加入する意思がなかった場合は、その旨を明確に通知してください。

退会するには会館へ行く必要がありますか。

一般的には、退会の意思表示を行うために必ず会館へ出向かなければならないわけではありません。書面を郵送し、退会の意思を明確に伝える方法があります。

退会後も勧誘が続く場合はどうすればよいですか。

今後の訪問、電話、郵便、SNSなどによる連絡を拒否する書面を送付します。それでも自宅への訪問やつきまといが続く場合は、記録を残したうえで警察や専門家へ相談してください。

家族が顕正会に入会した場合、家族が退会させられますか。

成人した本人の信仰や退会は、原則として本人の意思によります。家族が一方的に退会手続を行うことは困難ですが、本人の生活状況や勧誘活動による影響を整理し、本人と話し合うことは可能です。

勧誘時の会話を録音してもよいですか。

自分が当事者として参加している会話を、トラブルの記録として録音することは有力な証拠保全方法となります。ただし、録音データをインターネット上で公開すると、名誉毀損やプライバシー侵害など別の問題が生じることがあるため注意してください。

顕正会の退会や勧誘拒否は書面で通知できます

直接会館へ行くことに不安がある場合や、紹介者、会員、会館からの連絡を止めたい場合は、退会の意思と今後の接触を拒否する旨を書面で通知する方法があります。

生命または身体に危険がある場合や、現在進行形で帰宅を妨げられている場合は、専門家への相談より先に110番通報してください。

まとめ

顕正会をめぐっては、会員による勧誘に関連して、逮捕監禁、暴行、強要、未成年者誘拐などの容疑が問題となった事件が報道されています。また、警察の捜査を違法として顕正会の会員が国家賠償を求めた裁判や、公民館の利用拒否について顕正会側の主張が一部認められた裁判もあります。

これらの事件を理解する際には、逮捕と有罪判決を区別し、不起訴処分などの最終的な経過も確認しなければなりません。

宗教勧誘そのものは違法ではありませんが、相手を脅す、帰宅させない、身体を拘束する、拒否後も訪問を繰り返すといった行為は、信教の自由によって正当化されるものではありません。

強引な勧誘を受けた場合は、その場で入信届などに署名せず、明確に断ってその場を離れることが大切です。すでに入会している場合でも、本人には退会の意思を示す自由があります。対面での話し合いに不安があるときは、内容証明郵便などを利用して退会と接触拒否の意思を通知する方法を検討してください。

参考資料

本記事は公開資料および報道内容をもとに一般的な情報を整理したものです。個別事件における刑事責任や、特定の人物・団体の違法性を断定するものではありません。

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