返金を約束されたのに入金されないときは、返金の根拠・金額・支払期限を整理し、内容証明で請求する方法があります。ただし、内容証明を送っただけで返金義務が生じたり、必ず回収できたりするわけではありません。この記事では、返金合意がある場合のテンプレートを中心に、契約解除を理由に請求する場合との違い、必要な証拠、送付後の対応を解説します。商品代金やサービス代金など、すでに支払ったお金の返金を求める方が対象です。
返金請求の内容証明を書く前に確認すること
「返してほしい理由」と「返す義務の根拠」を分ける
「対応に納得できない」「説明より効果が低かった」という不満だけでは、支払済み代金の全額を当然に返してもらえるとは限りません。まず、相手が返金を約束したのか、契約の返金条項に該当するのか、法律上認められる解除などの根拠があるのかを確認します。
返金合意が成立している場合は、合意日・対象契約・返金額・返金期限を特定します。「確認します」「返金できるか検討します」という返信と、「代金○円を○月○日までに返金します」という回答を同じものとして扱わないことが大切です。
民法第522条は、申込みに対して相手が承諾したときに契約が成立し、法令に特別の定めがない限り書面を必要としないと定めています。返金に関する合意も、紙の合意書がないという理由だけで直ちに否定されるものではありません。ただし、合意の成立と内容を説明できる証拠は必要です。
返金を請求する相手を確認する
商品を購入したサイト名、店舗名、振込先名義、契約書の相手方が一致しているか確認します。販売サイトの運営会社、決済会社、販売者が別の場合もあるため、問い合わせ窓口という理由だけで返金義務を負う相手と決めつけないでください。
法人に請求する場合は、正式な法人名と所在地を調べ、必要に応じて代表者を宛名に併記します。「株式会社○○ 代表取締役○○様」と書いても、代表者個人に返金を求めるという意味にはしません。個人事業者については、屋号だけでなく事業者本人の氏名も確認します。
契約解除を理由に返金を請求する場合の注意点
相手が返金に合意していない場合は、先に返金の前提が整っているか確認します。特に、商品が届かない、約束したサービスが提供されないといった場合も、「返金請求書」と題した文書を送れば自動的に契約が解除されるわけではありません。契約内容、履行状況、これまでの催告や通知を整理する必要があります。
解除権を適法に行使した場合、民法第545条第1項は、各当事者が相手方を原状に戻す義務を定めています。ただし、返金だけを受けて商品を保持できると決まるわけではなく、受け取った商品などの返還も確認が必要です。継続的なサービスの解約について、過去の利用分まで必ず全額返金されるという規定でもありません。
通知では、契約を解除した日、解除を通知した方法、返金の対象とする代金を区別して書きます。解除の有効性や返還範囲について相手と争いがある場合は、返金合意済みのテンプレートを流用せず、送付前に弁護士へ相談してください。
「解約希望」と「解除済み」は別です。申し込みを取り消したいという希望を伝えただけの段階で、「契約はすでに解除されています」「全額返金義務があります」と断定する文面は避けましょう。
返金請求に必要な資料と金額の整理
契約・支払い・返金合意を一つにつなげる
資料は大量に並べるより、「どの取引について、いくら支払い、なぜいくら返してもらうのか」がつながるように整理します。口頭のやり取りは、日時・担当者・発言内容を記録し、録音などがあれば元のデータも保管してください。
| 確認する事実 | 主な資料 | 確認のポイント |
|---|---|---|
| 契約の相手と内容 | 申込書、注文メール、契約書、利用規約 | 契約日、商品・サービス名、注文番号、当時の条件 |
| 支払った金額 | 振込明細、領収書、カード利用明細 | 支払日、支払先、対象取引との対応 |
| 返金の根拠 | 返金合意書、メール、メッセージ、解除通知の控え | 返金額・期限の合意や解除の経緯 |
| 現在の未返金額 | 入出金記録、返金処理の案内 | 一部返金、カード取消し、控除の合意の有無 |
メールやメッセージは、返金を約束した一文だけでなく、その前後、送信者、日時が分かる状態で保存します。商品ページや返金条件が後から変更される場合も考え、申し込み時に交付された資料や保存済みの画面を探してください。
支払済み額をそのまま請求額にしない
例えば、代金12万円を支払い、その後、全額返金で合意したものの3万円しか返っていない場合、未返金の元金は9万円です。この場合は「支払済み代金12万円」「返金合意額12万円」「返金済み3万円」「今回請求する残額9万円」と内訳を示します。これは説明用の仮定であり、すべての契約で全額返金になるという意味ではありません。
相手が解約手数料や利用済み部分を控除すると主張している場合は、その根拠と計算内容を確認します。控除に同意していないのに「差引額で合意済み」と記載したり、すでに返金された金額を含めて請求したりしないでください。
利息、遅延損害金、郵便費用、専門家への依頼費用は、元金とは区別します。何でも相手に負担させられるわけではないため、根拠や計算を確認できない費用を一括して上乗せする書き方は避けます。元金の返金をまず求める文例であっても、他の権利を放棄する文言は不用意に加えないでください。
返金請求の内容証明テンプレート

返金合意の期限が過ぎた場合の文例
次の文例は、返金する対象・金額・期限について合意が成立し、その期限が過ぎている場合を想定しています。未合意の解約、詐欺取消し、商品の不具合を理由とする一方的な解除などに、そのまま使用するものではありません。○印の部分は実際の資料に合わせて置き換えます。
返金請求書
令和○年○月○日
〒○○○―○○○○
○○県○○市○○
株式会社○○
代表取締役 ○○○○様〒○○○―○○○○
○○県○○市○○
通知人 ○○○○私は、令和○年○月○日、貴社との間で○○に関する契約を締結し、同月○日、その代金○円を指定口座に振り込みました。対象の注文番号は○○です。
その後、令和○年○月○日の電子メールによるやり取りにおいて、貴社が上記代金のうち○円を同月○日までに返金することについて合意しました。
しかし、令和○年○月○日現在、返金済み額は○円であり、残額○円の入金を確認できていません。
つきましては、上記合意に基づき、未返金額○円を令和○年○月○日までに、次の口座へ振り込んでお支払いください。
○○銀行 ○○支店
普通預金 口座番号○○○○○○○
口座名義 ○○○○すでに返金手続がお済みの場合は、確認のため、手続日、返金額、返金方法をご連絡ください。請求内容に相違があるとお考えの場合は、その内容と根拠をお知らせください。
期限までに入金を確認できない場合は、返金の実現に向けた法的手続を検討します。
以上
一度も返金されていない場合は「返金済み額は0円」とするか、「上記○円の入金を確認できていません」と整理します。注文番号がない取引ではその記載を削除し、契約日や商品名など、対象取引を区別できる情報を残してください。
商品返送が返金の条件になっている場合
返金合意に「商品到着後に返金する」という条件があるときは、合意した期限の数え方と返送状況を確認します。文面には「商品を令和○年○月○日に指定先へ発送し、同月○日に配達されたことを確認しています」など、確認できた事実を補います。まだ条件を満たしていないのに、返金期限が過ぎたと断定しないでください。
返送先や方法の指定が不明なら、先にその点を問い合わせ、返金の前提を整えます。返送した商品、付属品、梱包状態、発送控えも保存し、発送したことと相手に配達されたことを分けて記録すると、後の確認がしやすくなります。
支払期限と連絡方法を具体化する
文例の期限は、郵送に要する日数、相手の確認作業、銀行の営業日などを踏まえて決めます。返金合意後の催促について、すべての場合に共通する「法律上必ず7日」という期限があるわけではありません。すでに合意した期限と、今回改めて求める期限を区別してください。
今回の期限を記載することで、元の返金期限を取り消したり、過去の遅れを免除したりする趣旨にしたくない場合は、その点も文面で明確にします。連絡を文書にまとめたいときは、回答先の住所などを記載しますが、返信用封筒は内容証明に同封できません。
「支払わなければ詐欺として公表する」「家族や勤務先に知らせる」といった文言は不要です。実施を決めていない訴訟を「必ず起こす」と書くより、事実と要求事項を淡々と示す文面にします。
内容証明を送る準備と送付後の対応
証拠資料は本文と別に管理する
内容証明は、いつ、誰から誰へ、どのような内容の文書を差し出したかを証明する郵便サービスです。日本郵便が返金義務の有無や記載内容の真実を認定するものではありません。
通常の窓口差出しでは、相手に送る内容文書1通、その謄本2通、差出人・受取人の住所氏名を記載した封筒などを準備します。謄本には字数・行数などの条件があります。上の文例は文面の参考であり、画面の配置のまま印刷して必ず受け付けられる完成用紙ではありません。
領収書のコピー、契約書、写真などを別の添付物として同封することはできません。返金の根拠となる日付や金額は本文に書き込み、証拠を相手に示す必要があれば別便や別の連絡方法で送ります。別送資料まで内容証明で証明されたことになるわけではないため、資料の一覧と送信記録を別途残します。
配達・回答・入金を別々に確認する
内容証明と併せて配達証明を利用し、差出しの控え、追跡番号、配達状況、相手からの回答を保管します。返送された場合は封筒を捨てず、宛先不明、保管期間経過、受取拒否などの表示を確認してください。「発送できたから必ず届いた」と判断せず、不達の事情に応じて対応を検討します。
相手から「返金した」と連絡があっても、実際の入金まで確認します。カード決済の取消しで返すとの説明であれば、銀行口座への振込みと混同せず、取消し対象の取引、処理日、返金額を照合します。銀行への返金とカード取消しの両方で二重に受け取っていないかも確認してください。
一部返金があったときは残額を更新します。分割返金の提案があった場合は、各回の金額と期日、最終回の金額まで書面で確認してから判断します。「これで一切解決した」とする清算条項などは、残額や別の請求を放棄する内容になっていないか注意が必要です。
通知を繰り返せば時効を防げるわけではない
返金請求が民法上の催告に当たる場合、現行民法第150条により、催告の時から6か月を経過するまで時効の完成が猶予されます。ただし、時効期間が最初から数え直される制度ではありません。猶予されている間に同じ請求を再度送っても、その催告による新たな完成猶予は認められません。
古い契約や長期間経過した返金請求では、適用される法律、時効期間、起算点、これまでの請求や回答を個別に確認する必要があります。期限が迫っている場合は内容証明の回答を待ち続けず、弁護士に相談し、必要な裁判手続などを検討してください。
当事務所への依頼を検討する場合も、まず返金合意や支払いの資料を整理してお伝えください。行政書士による支援は、法令上認められる範囲での文書作成などが対象です。返金義務や解除の有効性についての紛争、相手との代理交渉、訴訟代理を引き受けるものではありません。
返金請求の内容証明に関するよくある質問
相手が個人でも、このテンプレートを使えますか?
返金合意が成立し、その期限が過ぎているという前提が合えば、宛名を本人の住所氏名にし、「貴社」を「あなた」に変更するなどして参考にできます。ただし、貸したお金の返済請求とは契約関係が異なるため、返金の原因を実際の取引に合わせて書き直してください。
相手に無視されたら、請求を認めたことになりますか?
内容証明に回答しなかっただけで、相手が返金義務や請求額を認めたことにはなりません。「返事がない場合は承諾したものとみなす」と一方的に書いても、それだけで合意が成立するわけではありません。
返金の約束が電話だけの場合はどうすればよいですか?
通話日時、相手の氏名、返金額や期日について話した内容、録音の有無を整理します。返金条件を確認するメールなどを送り、相手の回答を残す方法も考えられます。記憶が曖昧な部分を確定した合意として書かないようにしてください。
内容証明を送れば相手の口座を差し押さえられますか?
内容証明だけでは差押えはできません。裁判手続などによって強制執行に必要な根拠を得ることと、実際に差押えの手続を行うことは別です。通知後も返金されない場合は、証拠や相手の状況を踏まえ、弁護士に次の手段を相談してください。
まとめ
返金請求の内容証明では、返金の根拠、対象の取引、残額、支払期限を資料と一致させることが重要です。返金合意済みの文例と、契約解除の有効性から確認しなければならないケースを混同しないようにしましょう。
送付後は配達だけでなく、回答内容と実際の返金処理まで確認します。返金義務を争われている場合や時効が迫っている場合は、通知を繰り返すだけにせず、必要な専門家への相談につなげてください。
参考資料
制度や手続の確認に役立つ公式情報です。

