「騒音は何デシベルを超えたらアウトなのか」「夜は何時から静かにしなければならないのか」と疑問に思う方は多いでしょう。結論からいうと、全国一律に「○時に○デシベルを超えたら違法」と決まっているわけではありません。環境省の環境基準では昼間・夜間の目安が定められていますが、これは地域全体の環境を評価するための基準です。実際の近隣騒音では、デシベルだけでなく、時間帯、継続時間、頻度、音の種類、建物の構造、自治体の条例などを総合して考える必要があります。
- 80デシベルは地下鉄の車内くらいの音が目安
- 70デシベルは掃除機や騒々しい事務所くらい
- 60デシベルは普通の会話くらい
- 全国的な環境基準では午後10時から翌午前6時が「夜間」
- 住居系地域の環境基準は昼55デシベル以下・夜45デシベル以下が一つの目安
- ただし、基準値を超えただけで直ちに違法になるわけではない
騒音のデシベルとは?まず基本を確認
騒音の大きさを表すときに一般的に使われる単位が「デシベル(dB)」です。数字が大きくなるほど音も大きくなりますが、デシベルは単純に数字の割合だけで比較できるものではありません。
また、同じデシベルであっても、聞く人が感じる不快感は同じとは限りません。一定の機械音が続く場合と、突然「ドン」と発生する衝撃音とでは、同じ測定値でも感じ方が異なることがあります。
さらに、騒音トラブルでは「何デシベルだったか」だけでなく、深夜なのか昼間なのか、何分続いたのか、毎日発生しているのか、睡眠などにどのような影響が出ているのかが重要になります。
デシベルだけで「騒音かどうか」を決めない
音の大きさは重要な判断材料ですが、近隣騒音では発生時間、頻度、継続時間、音質、生活への影響なども併せて確認することが大切です。
何デシベルでどのくらいうるさい?身近な音の目安
デシベルの数字だけを見ても、「実際にはどのくらいの音なのか」が分かりにくいでしょう。公的機関が示している身近な音の例を整理すると、おおむね次のようなイメージになります。
| 音の大きさ | 身近な音の目安 | イメージ |
|---|---|---|
| 120デシベル | 飛行機のエンジンの近く | 非常に大きな音 |
| 110デシベル | 自動車の警笛を近くで聞いた場合 | 極めて大きい |
| 100デシベル | 電車が通るときのガード下 | 会話がかなり困難 |
| 90デシベル | 大声・騒々しい工場内など | かなりうるさい |
| 80デシベル | 地下鉄の車内など | 大きな声でないと会話しにくい程度 |
| 70デシベル | 掃除機・騒々しい事務所 | 日常生活ではかなり気になる音 |
| 60デシベル | 普通の会話・静かな乗用車 | 一般的な会話程度 |
| 50デシベル | 静かな事務所 | 比較的静か |
| 40デシベル | 図書館 | かなり静か |
| 30デシベル | ささやき声 | 非常に静か |
| 20デシベル | 木の葉が触れ合う音 | ほとんど気にならない程度 |
例えば、室内で継続して80デシベル程度の音が聞こえているのであれば、「地下鉄の車内に近いレベルの音」とイメージできます。一方、40~50デシベル程度でも、深夜の静かな寝室で断続的な衝撃音が発生している場合には、生活への影響が大きくなることがあります。
そのため、「60デシベルだから大丈夫」「50デシベルだから騒音にはならない」と数字だけで結論を出すことはできません。
何時から何デシベルならOUT?環境基準を確認
騒音について全国的な一つの目安となるのが、環境省の「騒音に係る環境基準」です。道路に面する地域以外の一般地域では、昼間と夜間で異なる基準値が設定されています。
時間帯は、全国的な環境基準では午前6時から午後10時までを昼間、午後10時から翌日の午前6時までを夜間としています。
| 地域の類型 | 昼間 6時~22時 | 夜間 22時~翌6時 | 地域のイメージ |
|---|---|---|---|
| AA | 50デシベル以下 | 40デシベル以下 | 特に静穏を必要とする地域 |
| A・B | 55デシベル以下 | 45デシベル以下 | 専ら又は主として住居に利用される地域 |
| C | 60デシベル以下 | 50デシベル以下 | 住宅と商業・工業等が混在する地域 |
一般的な住宅地で考える場合、「昼間55デシベル以下・夜間45デシベル以下」という数字が一つの参考になります。
特に午後10時以降は夜間区分になるため、同じ音量であっても昼間より静かな環境が求められています。「夜中の50デシベル」と「昼間の50デシベル」は、周囲の環境や生活への影響という点で同じように評価されるとは限りません。
55デシベルを超えたら「違法」ではありません
環境基準は、人の健康を保護し生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい行政上の目標となる基準です。個々の隣人が一度55デシベルを超える音を出しただけで、直ちに違法になるという意味ではありません。
基準を超えたらすぐ違法になるわけではない
騒音問題で特に誤解されやすいのが、「基準を1デシベルでも超えれば相手が違法になる」という考え方です。
近隣住民同士の騒音について法的責任が問題となる場合には、音量だけでなく、発生時間帯、継続時間、頻度、地域性、建物の構造、これまでの改善要請、相手側が講じた対策、被害の程度などが総合的に考慮されます。
例えば、昼間に短時間だけ掃除機を使用して70デシベル程度になった場合と、深夜1時から毎日長時間にわたり同程度の音を発生させている場合とでは、状況が大きく異なります。
民事上は、騒音の程度が社会生活上受忍すべき範囲を超え、他人の権利や法律上保護される利益を侵害したと評価される場合には、不法行為責任が問題となる可能性があります。
したがって、「何デシベルなら絶対に勝てる」「45デシベルを超えたから慰謝料を請求できる」といった判断はできません。
自治体の条例では時間帯がさらに細かい場合がある
全国的な環境基準とは別に、都道府県や市区町村の条例で生活騒音に関する具体的な基準が定められている場合があります。そのため、騒音トラブルが起きた地域の条例を確認することも重要です。
例えば東京都では、日常生活等の騒音について、地域ごとに時間帯を分けて規制基準を設けています。住居系地域を含む第1種・第2種区域の例は次のとおりです。
| 東京都の例 | 6時~8時 | 日中 | 夕方~23時 | 23時~翌6時 |
|---|---|---|---|---|
| 第1種区域 | 40デシベル | 45デシベル | 40デシベル | 40デシベル |
| 第2種区域 | 45デシベル | 50デシベル | 45デシベル | 45デシベル |
このように、自治体によっては午後10時ではなく午後11時などを境に規制値が変わる場合もあります。
もっとも、東京都のこの日常生活騒音の規制基準は、音源となる敷地と隣地との境界線における音量を対象としており、集合住宅など同じ建物内部の各住戸間の騒音には適用されません。
つまり、「東京都の夜間基準が40デシベルだから、上階の足音も40デシベルを超えれば条例違反」と単純に判断することはできません。
マンションの足音はデシベルだけでは判断しにくい
マンションで多い「ドンドン」という足音や、子どもが走る音、物を床に落とした音などは、空気中を伝わる音だけではなく、床や壁、柱など建物の構造を通じて伝わることがあります。
このような音は、室内で実際には強い振動や衝撃として感じていても、スマートフォンのマイクでは十分に記録できないことがあります。そのため、スマホアプリで「45デシベルしか出なかった」としても、それだけで騒音被害がないとはいえません。
足音トラブルでは、次のような事情も整理することが重要です。
- 発生する時間帯が深夜・早朝ではないか
- 毎日または頻繁に繰り返されていないか
- 走る音、飛び跳ねる音など強い衝撃音ではないか
- 何分、何時間程度続いているか
- 睡眠や在宅勤務などに具体的な支障が生じているか
- 管理会社から注意された後も継続しているか
デシベルは有力な資料の一つですが、騒音日記や録音、管理会社への相談履歴などと併せて状況を示す方が実態を伝えやすくなります。
騒音を測るときの正しい考え方
スマートフォンには騒音計アプリがありますが、端末のマイク性能やアプリの補正方法によって測定結果に差が出ます。そのため、スマホアプリの表示値は「おおよその傾向を記録する資料」と考える方が安全です。
条例等の規制値との比較や、より客観的な測定が必要な場合は、適切な騒音計を利用する方法があります。自治体によっては騒音計の貸出しを行っている場合もあるため、環境担当部署へ確認してみるとよいでしょう。
また、単発の最大値だけを記録するのではなく、測定した日時、場所、測定時間、窓の開閉状況、音の種類なども一緒に残しておきます。
「最大80デシベルだった」だけでは資料として不十分な場合があります
どの部屋で、何時に、何秒・何分続いた音なのかが分からなければ、実際の被害状況を判断しにくくなります。数値と騒音日記をセットで残しましょう。
騒音トラブルで残しておきたい記録
騒音が継続しており、管理会社への相談や相手方への通知まで検討する場合は、できるだけ客観的な記録を残しておきましょう。
- 騒音日記を作成する 日付、開始時刻、終了時刻、音の種類、発生場所を記録します。
- 録音・動画を保存する 元データを編集せず、撮影日時が確認できる状態で保存します。
- 測定値を記録する 使用した機器やアプリ、測定場所、測定時間と一緒に記録します。
- 生活への影響を整理する 睡眠を妨げられた、仕事ができなかったなど具体的な影響を記載します。
- 相談履歴を残す 管理会社、管理組合、自治体、警察等へ相談した日時と回答を保存します。
「毎晩うるさい」という説明より、「9月15日の23時40分から翌0時20分まで、寝室で断続的な床衝撃音が発生した」と記録する方が、第三者にも状況が伝わりやすくなります。
騒音が改善しない場合は書面通知も検討
管理会社や管理組合へ何度相談しても騒音が改善しない場合や、相手方へ直接苦情を伝えることに不安がある場合には、書面による改善要請を検討できます。
通知書には、「○デシベルを超えたから違法だ」と断定的に書くよりも、実際に発生している騒音の日時、音の種類、継続時間、測定結果、生活への影響、これまでの相談経過を具体的に記載することが重要です。
例えば、次のような事項を整理します。
- 騒音が発生し始めた時期
- 特に問題となっている時間帯
- 足音、音楽、話し声など音の種類
- 測定している場合はその数値と測定条件
- 睡眠や日常生活への影響
- 管理会社等へ相談した経緯
- 今後求める具体的な改善内容
より明確に通知内容を記録として残したい場合には、内容証明郵便を利用する方法もあります。内容証明郵便は、どのような内容の文書を誰から誰宛てに差し出したかを証明する制度であり、相手が必ず騒音をやめることを保証する制度ではありません。
行政書士による文書作成
行政書士は、依頼者から騒音の状況やこれまでの経緯を確認し、騒音停止・改善を求める通知書や、管理会社への申入書などの文書作成を支援できます。一方、相手方との代理交渉や損害賠償をめぐる交渉、訴訟対応が必要となる場合は弁護士への相談が適切です。
大倉行政書士事務所では、上階の足音、深夜の生活騒音、音楽、話し声、振動音などの騒音トラブルについて、通知書・内容証明郵便の作成を全国対応でサポートしています。騒音測定の記録がある場合は、騒音日記や管理会社とのやり取りと併せて状況を整理したうえでご相談ください。
よくある質問
夜は何時から騒音に注意すべきですか?
全国的な騒音の環境基準では、午後10時から翌午前6時までを「夜間」としています。ただし、自治体の条例では午後11時など別の時間区分を設けている場合があります。お住まいの地域の条例も確認してください。
夜に45デシベルを超えたら違法ですか?
直ちに違法になるわけではありません。住居系地域の環境基準では夜間45デシベル以下が一つの目安ですが、環境基準は地域環境について維持されることが望ましい目標となる基準です。個別の近隣騒音については、条例の適用関係や発生時間、継続性などを確認する必要があります。
80デシベルはどのくらいうるさいですか?
公的機関が示している目安では、地下鉄の車内がおおむね80デシベル前後の例として挙げられています。かなり大きな音と考えてよいでしょう。
スマホアプリで測ったデシベルは証拠になりますか?
騒音の発生状況を説明する補助資料にはなり得ますが、端末やアプリによって精度が異なります。数値だけに頼らず、録音、騒音日記、相談履歴なども残してください。客観的な測定が重要な場合は、適切な騒音計の利用を検討します。
上の階の足音が50デシベルなら我慢しないといけませんか?
50デシベルという数字だけでは判断できません。深夜に強い衝撃音が何度も発生しているのか、短時間の通常の生活音なのかによって状況は異なります。特に床衝撃音はスマートフォン等で正確に拾いにくい場合もあるため、発生時間や頻度を含めて記録しましょう。
まとめ
騒音のデシベルについては、80デシベルなら地下鉄の車内、70デシベルなら掃除機、60デシベルなら普通の会話、40デシベルなら図書館程度が一つの目安です。また、全国的な環境基準では午前6時から午後10時までを昼間、午後10時から翌午前6時までを夜間とし、一般的な住居系地域では昼55デシベル以下、夜45デシベル以下が目安とされています。
しかし、「午後10時を過ぎて45デシベルを超えたら即OUT」というものではありません。環境基準と個別の騒音トラブルにおける違法性の判断は別であり、自治体の条例、音の種類、継続時間、頻度、生活への影響などを総合して考える必要があります。
騒音トラブルが続いている場合は、デシベルの測定だけでなく、日時、継続時間、録音、生活への影響、管理会社等への相談履歴を残しましょう。改善されない場合には、記録を整理したうえで管理会社・管理組合への書面申入れや、相手方への通知書・内容証明郵便を検討する方法があります。
参考サイト
騒音の基準、デシベルの目安、条例等を確認するための公的な資料です。

